Essential Talk 第4回
2015年2月26日
ひとつではない「答え」を探す -2-
相手の目標に寄り添う
黒原:
前回は、パーソナルトレーナーとして指導をする中で、競技者とお客さまとのメンタリティの違いに戸惑った経験を話していただきました。では、そのような経験を通じて、小早川さん自身にどのような変化がありましたか?
小早川:
「お客さまが本当に求めていうことは何か?」ということを意識するようになりました。前回お話しした例でいうと、「バーベルを100キロ上げる」というものはあくまで目安のひとつで、「それくらい強くなりたい」というのがお客さまの求めることだったのではないかと思います。
黒:
では、「100キロ」という目標は気にしないということ?
小:
いえいえ、やはり目標は目標です。ただ、そこに至る過程もサービスとして捉えるようになりました。お客さまの求めることは「強くなりたい」ですから、そこに向けて着実に進んでいることを実感していただくこともサービスのひとつだと考えています。目標達成ということに加えて、「充実感」を得ていただくことも大事だということです。
黒:
具体的にはどういうことでしょうか。
小:
目標達成に至る過程では、なかなかバーベルの重量が伸びない時期があります。それは競技者も同じ。ただ、競技者が自身のメンタリティで乗り越えられる壁を、一般の方はなかなか乗り越えられない。そういうときに、「フォームが良くなった、力がついた」といったことをきちんと伝えて、「強くなりたい」という目標に近づいていることを感じてもらえるように心がけています。それが「充実感」につながると思っています。
黒:
そのあたりの変化を数値以外で伝えることができるのも、競技者としての経験によるものが大きいですよね。
小:
そうだと思います。
黒:
しかし、指導する相手を「競技者目線」だけではなく、違う見方もできるようになったんですね。
小:
はい、「答え」はひとつではないんです。第1回の際にお話しした「マイナスになっている体の状態をゼロに引きあげる」という発想もこういうところから出てきました。競技者ではない方にも、バーベルエクササイズに取り組んでいただきたいと思うようになったわけです。
黒:
自分本位な理由で始められたパーソナルトレーナーだったようですが、すっかり相手のことを考えられるようになれましたね(笑)
競技者として、指導者として
小:
まぁ、そういうことです(笑)ただ、実は人を指導することが競技者としての自分にとってもプラスになっていることを感じています。
黒:
例えば、どのようなところで?
小:
第2回でお話したように私はよくケガをしていたわけですが、それは無茶をするばかりでコントロールすることが苦手だったということ。指導するときには、ケガをさせないように配慮しながら進めていきますので、そういった経験が自分自身をコントロールすることにも活かされています。
黒:
逆に競技者としての経験の中で、パーソナルトレーナーをやる上で活かされているところをひとつだけ挙げるとしたら何でしょうか?
小:
やはり、ケガでしょうか・・・。「こうするとケガをしますよ。私もそうでしたから」と言うと説得力がありますし。第1回でお話したように「正しいフォームでやること」「ちゃんとした指導の下でトレーニングを行うこと」を強くお勧めするのは、そうした私の経験が根幹にあるんです。
黒:
まさにケガの功名ですね(笑)競技者として、パーソナルトレーナーとして、これからもご活躍を期待しています。長丁場にわたり取材にお付き合いいただきありがとうございました。
小:
こちらこそありがとうございました。