Essential Talk 第3回

2015年2月26日

ひとつではない「答え」を探す -1-

競技者との両立を目指して

黒原:
今回はパーソナルトレーナーとしての小早川さんについてお聞きできればと思います。まずは、始められたきっかけを教えていただけますか?

小早川:
正直なお話をしますと、競技者としての自分を高めながらやれる仕事ということで、必然的にパーソナルトレーナーという答えに行き着いたという感じでした。

黒:
あまり積極的な理由ではなかったということでしょうか?「自分の経験を後進に伝えたい!」みたいな熱いものを期待していたのですが・・・

小:
もちろん全くなかったわけではないですが、始めた頃は「競技者としての自分」というのがとにかく大きかったのは事実です。だからといって指導に手を抜いたわけではありませんので、その辺はご安心ください。

意識の違いに戸惑う
黒:
では、パーソナルトレーナーを始められて難しいと感じたことがあれば教えてください。

小:
多分ですが、それは先ほどお話ししたことと関連があると思っています。「競技者としての自分」という意識が強くて、指導するお客さまに対しても競技者目線で見てしまうところがあったんですよね。

黒:
それは問題なのでしょうか?別に悪いことではないような気がしますが。

小:
例えば、お客さまの目標が「ベンチプレスでバーベル100キロを上げる」ことだったとします。そうなると、「目標を達成するためには、まずはフォームを身につけること。そして、筋力をつけて、このくらいの重さを反復できるくらいにならないと・・・」と、私の今までの経験からやるべきことが導き出せるんですよね。

黒:
なるほど、形を作って、力をつけて、繰り返す。言うのは簡単ですが、そのあたりの目標設定は経験者だからこそできることですね。

小:
はい。例えば、バーベル100キロといっても、いきなり100キロを持たせて練習できるわけではありません。しっかりとサポートしますが、落下の危険性もありますので、力が備わってからでないとケガの元となります。そのため、100キロに挑戦するには「何をどのくらいできればよいか」を見極めることが必要で、経験者でないと難しいと思います。

黒:
「80キロを10回上げられたら挑戦する」というイメージでしょうか。

小:
その通りですが、ただ上げられるだけではなく、フォームがついてこないとダメですね。

黒:
なかなか難しいものですね…

小:
だからこそ、私たちパーソナルトレーナーの出番があるんです。道は険しいですから。
ただ、いざトレーニングを始めてみると、途中で「キツイです」と簡単に言われてしまう。で、私の方も「キツイのは当然だし、目標を達成するためだったら、これくらいはごく最低限なのに・・・。なぜ簡単に諦めてしまうのだろう?」となってしまいました。

黒:
そこが、最初におっしゃっていた「競技者目線で見てしまう」ということでしょうか。

目標達成の意味

小:
そうです。パーソナルトレーナーを始めた頃は、競技者とのメンタリティの違いに戸惑って、「目標を達成しなければいけないのに、これではできないかも」と、焦る気持ちでいっぱいでした。お客さまに満足いただけないんじゃないかと‥

黒:
ちなみに、目標は達成できたのでしょうか。

小:
試行錯誤をしながら、なんとか(笑)目標を達成されたときの喜ぶ姿を見て、嬉しかったのが半分、ほっとしたのが半分という感じでした。当初考えていたよりは時間がかかってしまったので、喜んでいただけるか不安だったんです。

黒:
実際はどうでしたか?

小:
いえ、そこはあまり気にされていませんでした。自分としては、「目標達成こそがサービスであり、それができなければサービスを提供したことにならない」と思い込んでいたんですが、違ったんですよね。

黒:
目標の達成だけでなく、そこに至るプロセスも含めてサービスということですね。営業の仕事でもよく言われることです。

小:
私たち競技者にとって目標達成は、大げさな言い方をすれば、何を犠牲にしてでも手に入れたいものなんです。結果が何より大事な世界です。それと同じようにお客さまに対しても考えてしまってたんですよね。

パーソナルトレーナーとして感じた戸惑い。この葛藤をどのように小早川氏は乗り越えていったのでしょうか。次回へ続きます

→第4回へ続く